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上々堂(shanshando)三鷹

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2007年 07月 05日

大人について

昨日、水曜日の朝日新聞の一面はちょっと……
例の辞めちゃった大臣がごめんなさいをしている写真がドーンと載せられて
いたのだけど、その真下にアルツハイマーに関する別の記事の見出しがき
ていて、四つ折り状態で一見すると、大臣がアルツハイマーだったような感
じがしてしまう。白髪も抜け落ちて広大なおでこの下になんだか独特の糠釘
な表情が惚けといえば惚けっぽくって、ちょっと気の毒だった。
まあ別に編集をした人に悪意があったとは思えないが。(あったかもしれない
けど)もしこの紙面に抗議するとしたら元大臣側だろうか?
ひょっとするとアルツハイマーの患者団体かもしれない。

アルツハイマーは、深刻な疾病だからあれだけど、そういう病気に罹らなくても
人間はある一定の年齢から全ての能力が衰退を始める。大体の大人は衰退過程
にある人と言って良いだろう。
生意気な話だけど、私は子供の時真剣に大人一般の能力を心配したことがある。
田舎育ちの私の傍に居た大人といえば、母親の処に世間話をしにくる近所のおば
さんか、父親の麻雀友達で、云っちゃあなんだが、どの人もあまり聡明そうには見
えなかった。今考えてみればそれはリラックスしている時の姿だったのだから馬鹿
話やおふざけばかりでも不思議は無いのだが、当時の私はなんだか不甲斐ない
感じの大人が許せない気がしたのだ。

それには勿論事情があって、じつは小学生の分際で冷戦まっただ中の世界の平和
を心配していたのだ。
私には5才上の姉がいて、この姉がある日学校で核兵器の話を聞いて来た。
話の細部は忘れたが、何しろ世界には米ソがそれぞれ持っている分だけでも、地球
を七度だか八度だかぶち壊せるだけの核兵器があって、ニクソンかフルシチョフの
どちらかが気の迷いからでもミサイルの発射ボタンを押しちゃえば、それでもう世界
は終わりになると云うのだ。

なにしろ私は今でもそうだが気の小さい人間で、その話を姉から聞いた日から眠れ
なくなった。もしかしたら今この瞬間に、ニクかフルのどちらかがボタンに手をかけ
たのではないか?と思うともう寝ていられないのだ。
新聞に載っている二人の写真はいずれも悪人ヅラで、とても思慮深い人間とは思え
ない。たまたま飛んで来た蚊が頬ッペタを刺しただけでも、ぶち切れてボタンを押し
そうだ。これはイカン。なんとかせねば。……といっても小学生だからどうしようもない。
とりあえず学校の先生に相談してみようか?それとも両親に?…どちらもダメそうだ。
事はいじめっ子が僕の給食たべちゃった!とかそういうレベルではないのだ。
もし、先生か親に「ニクとフルが世界を滅ぼしちゃうよー!」と訴えてみたところで、
先生も親もきっと二人を叱ってくれたりはしないだろう。それどころか、真剣に悩
みを聞いてくれない可能性すらある。

もともと消化器系の弱い私は不眠と心配のため慢性の下痢になり、一日に何度
もトイレに駆け込んでは世界を案じる、世界を案じてはお腹が痛くなりまたトイレへ。
すっかり痩せ細った私を見て父親は「こいつは神経質で虚弱だから将来落伍する
だろう。」と予言した。
この予言は七割ぐらい当たったと思うが、とにかく私の心配をよそに大人達は毎
日世間話と麻雀に明け暮れている。壊れたレコードプレイヤーのようにおんなじ
話を繰り返すおばさんや、麻雀をしながら酒に酔い小便を便器から零している
ようなおじさんを見て、もう絶対に世界は滅ぶに違いないと思った。

まぁ結局、子供の私には二人の悪人の理性が持ちこたえることをひたすら祈るし
かなくて、毎夜蒲団の中で祈った。たぶん現在に至るまで地球が持ちこたえてい
るのは偏にあの時の私の祈りのせいだと思うのだが、べつにノーベル平和賞は
貰わなくても良い。
月日が過ぎて今や私もダメな大人の一人となり、先日片言を話し始めたばかり
の娘が時折醒めた目線で私を見ていることに気付いた。
うーん、そうね、そう。
ダメなんだけどね。うーんまぁなるべく頑張ってみるけどさ、……あんまり期待は
しないでね。

by shanshando | 2007-07-05 16:28 | ■原チャリ仕入れ旅■


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