上々堂(shanshando)三鷹

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2008年 09月 06日

フイチンさん

西荻窪の駅を降りて、ボーッと歩いているとバス停の脇の小さな小さな告知板が
眼に飛び込んだ。
杉並区が既存の箱物を使ってやっているアニメーションミュージアムの告知だ。
アニメに特別の関心はないし、その場所自体も一度行ってみて、なんだかイマイチ
なコンセプトだなと感じたので、普通ならまぁ見逃すところだが、眼に飛び込んだのは
そこに「フイチンさん」の名前があったからだ。

「フイチンさん」は今年三月に亡くなった上田とし子さんが、昭和32年から37年まで
「少女クラブ」に連載していた漫画で、舞台は満州時代のハルピン。
年代的に言って勿論私はリアルタイムではその漫画を読んでいないが、数年前に
やった彷書月刊の特集でその名と作品を知った。

ハルピンや大連などの満州の町は日露戦争以前にロシア人が巴里を模して造った
街で、そこに中国文化が入り混じって、独特のエキゾチシズムを醸し出していたという
ことは、さまざまな本でも読むし、先日も買取で伺った満州出身のお客様にも話で聞いた。
歴史的ないきさつ、政治上の問題を抜いて考えても興味深い街々だ。

あにまる屋さんというところから出されたアニメ版「フィチンさん」にはそんなハルピン
の雰囲気が叙情たっぷりに描かれていて、偶々それを観たことのある私は、是非とも
その原画が観たくなった。杉浦日向子にとっての江戸じゃないけど、今はもはや幻と
化してしまった街は、やはり魅力的だ。

今回の展示は上田さんの追悼展ということで、同年輩から後輩になる数多くの漫画家
さんたち(ビッグネームばかり!)が寄せた色紙がいっぱい飾られ、アニメ製作のために
上田さん自身が思い出しながら描かれた当時のリアルな満州の情景画も面白く、
中央に展示された極状態の良い上田さんの著書も含めて、これ全部買い取ったら……
などといじましい皮算用をして終い勝ちな古本屋のサガを憎みながらも、十分に面白い
展示でありました。

しかし残念ながらこの展示、なんと明日(9月7日)まで、もっと早く教えんかい!って、
何しろ同年輩の長谷川町子などから比べると、知名度がそんなに高くない上田さんを
侮ってか、アニメーションミュージアムの告知はHPでの扱いも含めて不当に消極的、
会場での展示場所もなんだか無理無理隅っこに押しやられている感じ。
これが三鷹の市民ギャラリーだったら、もっと力を入れてやってくれるだろうに、と思い
ながら、福祉行政では軍配のあがる杉並区も文化行政では三鷹市に完敗だな!と思
わざるを得ないのであります。
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by shanshando | 2008-09-06 13:39 | ■原チャリ仕入れ旅■


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